営業マン時代の僕が知られたくなかった『住まいの維持費』について語ろう


今回は、僕のひみつを話します。

他にも、隠し事があるんじゃないの?
こんにちは!営業職をやってましたが、かなり人見知りな性格の晴です。
さて、あなたは、新築の戸建住宅(マンション)を維持する為に、いくら位のお金が必要かご存じですか?
おそらく、多くの方は答えられないでしょう。
もしかしたら、新築住宅を売っている営業マンですら、正確には知らないかも・・・。
今回、新築住宅を販売している営業マンが嫌がる、業界のタブーについて切り込みたいと考えています。
という訳で「住まいを維持するメンテナンス費用」について記事を書きました。
この記事を、最後まで読んでいただければ、「建物の維持費用」について、知識を得ることができるので、ぜひ、お進みください。
住まいの維持費

結論から言います。
マンションの維持費用は、月々徴収される修繕積立金でまかなわれますので、計算はしやすい。
問題は、戸建て住宅。
住宅産業協議会の指針によると、戸建て住宅を維持していく為に必要なメンテナンス費用(35年間)は、最低559万円~最高1,100万円程、必要となるそうです。
かなり費用の幅が広いですよね。
これは、あくまで個々の建物の劣化状態により変化するからだと推測されますが、最低でも559万円(月額換算1.33万円)は必要だと公表しているのです。(※住宅産業協議会:大手ハウスメーカーや設備機器メーカー、建材メーカーなどが会員で、住宅に関する共同課題について改善を進める団体)
住宅産業協議会「住まいのメンテナンス」
経過年数:10~20年 | ||
屋根 | 表面塗装 | 60~80万円 |
外壁 | 目地打換/塗装 | 2~200万円 |
外装部品 | 表面塗装 | 15~25万円 |
バルコニー | 部品交換、シーリング | 15~25万円 |
その他 | 足場費用 | 25~40万円 |
シロアリ対策 | 30~40万円 | |
小計 | 147~410万円 | |
経過年数:~35年 | ||
屋根 | 増張り/張替 | 140~180万円 |
外壁 | 目地打換/塗装/増張/交換 | 30~250万円 |
外装部品 | 塗装/交換 | 15~150万円 |
バルコニー | 本体交換 | 40~50万円 |
その他 | 足場費用 | 25~40万円 |
シロアリ対策 | 15~20万円 | |
小計 | 265~690万円 | |
合計 | 559~1,100万円 |
※住宅産業協議会・発表資料(2020年1月現在)

戸建ての修繕は自己責任
戸建住宅は、マンションと違って、個人の所有物なので、修繕を行うかは「任意」です。
だからといって、定期的な建物の修繕を行わないと、劣化はどんどん進行していきます。
新築時は大きな不具合は生じませんが、10~15年くらい経ってくると、外壁の塗装防水や金具等の劣化が見られるようになります。
これを放置しておくことで、雨漏れが発生したり、構造体の破損・腐食の原因となり、家の寿命を縮める原因となります。
住宅産業協議会は、建築後10~15年の間に1度目、35年までに2度目の修繕工事が望ましいと定義しています。
マンションのメンテナンス費用

マンションについても、国土交通省のガイドラインにより、適正な「修繕積立金の額の目安」が提示されています。
それによると、建築床面積10,000㎡以上、15階以下の建物で、㎡当たりの適正な修繕費は、月額135円~220円。
分かり易く説明すると、75㎡の住戸の場合、適正な修繕積立金は10,125円~16,500円は必要だと言うことです。
住戸75㎡の修繕積立金に換算
総建築面積 | 修繕積立金(月額)の目安 |
---|---|
5.000㎡未満 | 12,375円~18,750円 |
5,000~10,000㎡ | 10,500円~19,875円 |
10,000㎡以上 | 10,125円~16,500円 |
(20階以上) | 12,750円~18,375円 |
ちなみに、僕の住んでいるマンションは、建築総面積約20,000㎡、ファミリー向けで140世帯が住んでいます。
※国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」

マンション修繕積立金の落とし穴
ここで、気を付けないといけないのが、上記の試算が30年間の修繕費を均等に積み立てた金額(均等積立方式)であるということです。
現在、販売されているマンションのほとんどは、段階的に積立金を改正していく方式(段階的改定方式)。
つまり、新築当時、修繕積み立て金が月額5,000円であっても、段階的に値上がりすることを前提に計画されているという事です。
また、マンションの修繕費は建築面積と住戸数が増えるほど、スケールメリット効果が高くなり、小当たりの修繕負担金は安くなりますが、設備過多の物件や20階を超えるような高層建築物(タワーマンション)などは修繕費も高額になります。
物件を選ぶ際にも、将来の修繕費を見据えて、購入しましょう。

管理人の感想
今回の感想は、僕の懺悔になります。
もう、20年前の話。
僕がハウスメーカーで注文住宅の営業をしていた頃、『〇〇さん、家を長持ちさせる為には、定期的に修繕工事をしなければいけませんよ』というアドバイスをしませんでした。
もちろん、質問があればお答えしましたが、こちらからお伝えすることはありません。
理由は3つ。
当時の僕には、建物のメンテナンスが大切だという「意識」が欠けていた事。
正確な修繕工事の「知識」を持っていなかった事。
そして、何より、営業として「家」を売りたかったからです。
私が販売していた家は、高性能でデザインの評価も高い住宅でしたが、当然、価格も安くはありません。ただでさえ、高額なのに、今後のメンテナンス工事の費用まで、お客様に伝えたくなかったのです。
「後々の修繕費がこれだけ掛かるなら、他社にするよ」との言葉が、正直、怖かった。
でも、その対応は、誠実ではありませんでした。

ある転機
それから9年後、僕の考え方が、ガラリと変わる出来事が2度ありました。
ひとつは、戸建て業界から、マンション業界への転職です。
マンションの所有者は、毎月、管理費や修繕積立金を管理組合に収めなければなりません。だから、管理費や修繕積立金の説明は必須。
法的にも、30年間のマンション長期修繕計画を提示する義務を課せられており、顧客には修繕費用等の負担が発生することを伝えなければいけません。
戸建て営業出身の僕は、自ら「修繕工事が必要ですよ」と告知するマンション業界の対応に、ちょっと驚いたことを覚えています。
この対応の違いは、過去、マンション業界が修繕の重要性を顧客に伝えることを疎かにしてきた結果、修繕積立金不足の管理組合が多く発生し、社会問題になった反省からくるものでした。
戸建ての場合、あくまでも建物維持は施主個人の責任。企業の問題になりませんからね。

販売から管理する立場に
もうひとつの転機となったのが、販売からマンションの管理部門への部署移動でした。
この経験が、本当に大きかったのですが、実際、マンションの管理組合から修繕工事を請け負ったり、建物維持のアドバイスをする立場になったのです。
業務上、調査や工事に立ち合いますので、様々な物件を見てきました。
屋上防水が劣化して雨漏りが発生した建物、雨水の侵入により破損したコンクリート、塗装も剥がれ暗い印象になったマンション・・・等、多くの物件をに携わった結果、その重要性をより強く認識するようになったのです。
担当させていただくマンションの中には、築40年を超えるような古い物件もありました。
でも、定期的に修繕を行っている建物は、しっかりと耐久性を維持できていますし、古くはなっていますが、外観も悪くない。
そこに住む家族を守り、新しい住人を向かい入れ、外観の価値を損ねることなく存在する建物。
戸建て・マンションに関わらず、定期的な修繕工事は必要となりますので、将来の修繕にかかる支出まで考慮に入れ、住まいづくりを計画してください。